寄稿文

第58回全日本居合道大会団体総合優勝・七段の部個人戦準優勝に当たり  松下武人

第58回全日本居合道大会団体総合優勝・七段の部個人戦準優勝に当たり1

令和5年10月21日開催された第58回全日本居合道大会(主催:全日本剣道連盟(以下「全剣連」))におきまして、七段の部代表として出場させていただき、静岡県チームとして団体総合優勝、個人戦準優勝という成績を収めることができました。これまで御指導いただいた諸先生方に対しまして、厚く御礼申し上げます。


私が居合道と出会ったのは、30年前、大学に入学して居合道部に入部したときに遡ります。かねてから剣術に憧れていた私は、迷わず居合道部の門をたたきました。私が所属した中央大学居合道部は、範士九段故佐川博男先生を名誉師範に、教士八段故副島學先生を師範に招いて御指導いただける環境でした。いずれの先生も全日本居合道大会を制した実績をお持ちで、関東学生居合道大会で優勝を重ねる強豪校でした。そのようなことも露知らず、運動部に所属したことすらない私は、先輩から手ほどきを受け居合道を始めましたが、同期の剣道経験者の上達の早さに引け目を感じながら稽古を重ねる日々を過ごしました。

2年生になると徐々に大会で入賞できるようになり、稽古の積み重ねが成果につながる喜びを感じることができました。師範の副島先生から、癖がなく正確な技前を身に着けるよう御指導いただいたことが、私の居合道修行の礎になっているものと実感しております。


大学卒業後帰郷した私は、剣道・居合道範士八段故羽賀忠利先生の養心剣友会に入門しました。形のみならず、理合い、緩急強弱、間と間合いを研究するよう御指導いただき、さらには「剣居一体」の重要性についても常々お話をいただきました。これらの教えは今でも研究課題であり、終わりなき修行の道へといざなっていただいております。


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私にとって大学卒業後の居合道修行における目標は、学生時代の師匠のように全日本居合道大会に出場し、上位に進出することでした。東海四県大会代表として三段から出場の機会をいただき、範士八段故小田克夫先生、教士八段久野道雄先生など静岡県剣道連盟(以下「県剣連」)の諸先生方から御指導をいただき、稽古を重ね、東海四県大会の連覇にも貢献することができました。しかし、県内ライバル選手(現県剣連居合道・杖道委員長佐野文博先生)に負け続け、壁にぶち当たりました。そのような中で、平成24年に静岡県を開催地として全日本居合道大会が行われることとなり、候補選手強化が行われ、範士八段山﨑正博先生をはじめ、全剣連の居合道委員など全剣連派遣講師の先生方から御指導をいただく機会に恵まれました。特に、師匠の羽賀先生が亡くなり、修行の道標を失っているときに山﨑先生には出稽古にお誘いいただき稽古をつけていただき、体と刀の運用や武道としての合理的な技前、段位付与基準に基づく修行のあり方など数多くの教えを頂きました。これらのことは、私の居合道修行における大きな転機となりました。こうした御支援により、平成24年、静岡県地元開催の第47回全日本居合道大会におきまして、六段代表に選出していただき、個人戦優勝、団体総合優勝の成績を収めることができました。この結果は、県剣連の絶大なる御支援によるところが大であったと考えております。これを機に、さらに意識を高く保ち、引き続き居合道修行に励むことができました。


それから11年間、六段、七段の県代表として9回出場するなど、強化選手として修錬を重ねてまいりました。瀧川貞司先生、吉村勝先生をはじめ、県剣連や静岡市剣道連盟などの多くの役員の先生方から薫陶を賜りつつ、強化稽古での八段の先生方や監督を中心とした御指導、出稽古での山﨑先生による御指導など、静岡県という恵まれた指導環境の中で稽古に励めたことで、さらに上の実力を身に着けるべく修行に邁進することができました。加えて、全剣連地区講習会、各種大会などにおいて県外の先生方からもお声掛けいただき薫陶を授かる機会にも恵まれ、これらのことが今般の全日本居合道大会での成績へとつながったものと考えております。諸先生方に賜りました御厚情は、誠に感謝の念に堪えません。


修行に終わりはなく一生続くものと思います。居合道、剣道を通じて、技術の向上のみならず人間形成につながる修行を重ね、職務や様々な活動を通じて社会にも精一杯貢献していかなければならないと常々考え、過ごしております。
 災害や戦争などにより、当たり前の日常が突如奪われることを報道等で目の当たりにすると、決して他人事ではないと感じずにはいられません。家族や友人の応援、恩師の教えを胸に、良き先輩、剣友とともにこの修行が続けられることへの感謝の気持ちを忘れることなく、一日一日を大切に過ごして参りたいと存じます。


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